今回は、「結樽(ゆいだる)」について紹介いたします。
結樽(ゆいだる)とは
樽酒を語る上で欠かせないものが、鎌倉時代に登場した結樽です。
同時代の“一遍上人絵伝(いっぺんしょうにんえでん)”に描かれています。
結樽とは樽の側面にあたる板(側板)を樽の形にならべてタガで締めたものです。
今日の酒樽も結樽の1つです。
酒や味噌などの仕込みに使用される木桶は固定されたフタがないため結桶となります。
結樽の登場以前、木の器というと木を刳(く)りぬいた刳物(くりもの)か曲げわっぱのような曲物でした。
樽にあたるものはつぼ(土器)で、衝撃に弱く持ち運びに使用できるものではありませんでした。
結樽の特長
結樽(桶)は大きさの制約がなく(一般に大きなものはほとんどが桶です。使用状況により酒などの運搬用の樽と仕込み用などの桶に分かれます。製作する樽(桶)の高さ=必要な原木の長さとなるため、刳物や曲物では製作困難なサイズも作ることができます)
軽くてこわれにくい性質をもち、時代とともに進化していきます。
のちに人が見上げるような大きな桶で酒や醤油、味噌などが醸せるようになっていきます。
そして結樽(桶)が酒などの醸造、貯蔵、運搬の容器としてなくてはならないものとなった理由は木材の性質によるところが大きいと考えられます。
- 木材がわりやすく、年輪にあたる冬目材が硬いため、酒などの浸透を防いでくれる。
- 液もれを防ぐ目的で樽(桶)の製造工程の一部に“正直をつく”というものがあります。
これは、意図してすき間を作り、タガで締めることによりすき間をなくしより強固で十分な気密性を確保する。(木材が軟らかく加工性が高い) - 木材が全国どこでも入手できるため地域生産に対応できる。
- 目には見えない穴が無数にあいているため断熱性に優れる。(外気温の高い夏場でも中身の酒の温度変化を抑える。同時に発酵に有用な菌の住みかとなる)
- タンニンを含んでいるため保存性を高めてくれる。
木材の中でも杉は全国どこでも入手しやすく(北海道では道南の一部に限られます)学名“クリプトメリア・ジャポニカ” 日本の隠れた宝とよばれ、現在も樽や桶の材料として利用が盛んな樹種です。
国産材(弊社は秋田杉に限定)を適切に使用していくことは山林としての機能(生物多様性、治水対策など)を正常に保つことにつながります。
そして樽・桶を製造していく上で原材料の確保は製品の持続可能性を決める重要な要素となります。
洋樽とは
また樽や桶の材料は杉(針葉樹)ばかりではなく広葉樹を使用した洋樽もあります。
杉樽の容量は広く流通しているもので72L程ですが、洋樽は400Lを超えるものもあります。(木桶は除きます)タガは金属製で重厚感がありますが、コロンとした愛らしいフォルム! 形からも高い技術が伝わってきます。
ウィスキーやブランデー、ワインの貯蔵用として世界中で広く使われています。
結ぶ樽とかいて結樽(桶)
用途はお酒ばかりではありません。味噌やしょうゆの仕込み桶、風呂桶、寿司桶、つけもの桶など様々です。
鎌倉時代に端を発する結樽は今日も私たちの暮らしの中で素晴らしい製品や体験を提供しています。
最後までお読みいただきありがとうございました。